珍道中記。
嫌なことばかりじゃなかった。
ひとりぼっちで、アメリカへ向かった君が心配だった。
まるで、はじめてのお使い。
みたいにさ。
お花に水やりお願いね。
そう、ありったけの笑顔でさ。
飛行機は長時間だし、座席は狭いんだよねぇ。
手荷物検査はそのまま通してくれた。
要するに、検査するまでもないお子さま。
だろう。
帰ってきた君にそう言うと
頬を膨らませ拗ねてた。
そんな君に
僕は後ろからぎゅっと抱き締めた。
お、お母さん。
居なくなっちゃったよ。
一粒の涙が、ぽたりと伝ってきた。
一人じゃない。
君の心の中にいつもいるよ。
そう、君の涙をそっと…拭いながら呟いた。
君は返事の代わりに
僕の手を
ゆっくり繋いで離そうとしなかった。