小春の思い。
ある晩のことだったかな。
夕飯過ぎた頃、僕は春にふと呼び止められた。
あのね、裕ちゃん…。
私、正直自分の病気受け入れるのは
怖いよ。
ちょこんと座った春は、ずっとずっと
小さく見えた。
時間の流れに任せたらいいさ。
なんて、格好いいことしか僕には言えなかった。
考え込んで、気分害してもまた問題だしな。
僕は、勝手に自分を納得させた。
でも。
時として、感情的になりお互いぶつかりあったなあ。
聴いてるのかよ?
聴いてないんじゃないよ。聴こえてないんだよ。
それの繰り返し。
多分、わかってんだよ。僕だって…。
頭ではね…。
春は、泣きじゃくり隣の部屋に身を隠した。
普通に聴こえる僕にとって、
わかろうとしても無理なのか?
どんな感じ?って思ったってわかんねぇよ。
病名を知って、春から笑顔が消えた。
わからない。って…テレビも観なくなった。
外に出ても、周りの人の話すことが
聴こえない。って外に出たがらなくなった。
こんなの良くない。
わかってるけど…。
そして、柔らかな風が季節を包む頃。
春の検査入院になった。
もちろん、春のお父さんにも知らせたけどさ。